【手順書作成】分かりやすい書き方のコツやおすすめのテンプレート
今回は、「マニュアル」と「手順書」の違い、手順書を作成する際に知っておきたいコツやおすすめのテンプレート、ツールについて説明します。
マニュアルと手順書の違い
まず、「マニュアル」と「手順書」の違いですが、特にはっきりした決まりはありません。手順書をマニュアルと呼んでいるケースやその逆もあり、一概には言えませんが、あえて言うなら「手順書」は「マニュアルのひとつ」です。
- マニュアル=業務の内容やルールを説明するもの(手順を含む場合もある)
- 手順書=作業の手順を説明するもの
それぞれの役割と内容を整理してみます。
マニュアルの役割と内容
マニュアルの役割は、業務に携わる人に業務の内容やルールを知ってもらうことです。
マニュアルに載せる内容は、業務に関する基本的な知識、業務フロー、業務の基準等です。
業務に関する基本的な知識
業務の全体像をつかみ、正しく理解するために必要な情報。
具体的には、組織の理念や方針、事業内容、守るべき法令、ルール、組織の構成・役割、業務の位置づけ等です。
この知識や理解が抜けてしまうと、業務を進めるにあたり、致命的な理解不足や勘違いが生じる恐れがあるため、大切な内容です。
業務フロー
業務全体の流れを示すもの。
業務が単体で完結することはまれで、複数のアクター(担当部署・担当者)が関わり、時系列に沿って進めることが多く、前後や横のつながりがあります。条件によって業務が分岐・合流することもあります。
そのため業務フローは、図形(四角や矢印)を使って、業務の流れが一目で分かるようにします。
業務の基準
業務に求める品質、所要時間、合格ライン等、業務に関する基準を示します。
基準をクリアしているかどうか判断できるようなチェックシートを載せることもあります。
マニュアルに業務の基準を示しておくと、マニュアル通りに作業をすれば、誰でも同じ品質で業務を実施できるようになります。
この他に、用語集やよくある質問集(FAQ)等を載せることもあります。
手順書の役割と内容
手順書の役割は、誰でも作業が抜け漏れなく正確にできるよう手順を詳しく説明することです。
内容は、工程や作業の説明と図解がメインです。
例えば、PCやプリンターに付属している製品マニュアルは、(名前はマニュアルでも)内容は手順書に相当します。
ところで、工程、作業とは具体的に何を指すのでしょうか。
JISの生産管理用語には以下の説明があります。
- 工程(プロセス)=入力を出力に変換する,相互に関連する経営資源及び活動のまとまり。
- 単位作業=一つの作業目的を遂行する最小の作業区分。
- 要素作業=単位作業を構成する要素で,目的別に区分される一連の動作又は作業。
…ちょっと分かりにくいですね。
例えば、料理でいうと以下のようになります。
- 工程=目玉焼きを作る
- 単位作業=冷蔵庫から卵を出す、フライパンを火にかける…
- 要素作業=冷蔵庫のドアを開ける、卵ケースから卵を2つ取り出す、冷蔵庫のドアを閉める…
したがって、「目玉焼きを作る」という工程ひとつをとっても、誰でも同じ品質で作業ができるようにするには、手順書を作って単位作業と要素作業を詳しく説明する必要がある、ということになります。
では、手順書を作成するにはどうすればよいか、続いて、手順書の必須項目や作成のコツをまとめました。
手順書の必須項目5つ
手順書の必須項目は次の5つです。
その他、必要に応じて、アウトプット、所要時間の目安、例外(イレギュラー)処理等を載せる場合もあります。
- 作業名・目的
- インプット(材料・ツール)
- 手順・ポイント
- 判断基準
- 注意事項
作業名・目的
何の手順なのか一目で分かるよう、「目玉焼きを作る」「目玉焼きの作り方」等の作業名を必ず付けます。
システムや機器の操作手順書では、「会員情報を登録する」「ドライバをインストールする」等が相当します。
また、何のためにその作業をするのかという「目的」も説明すると、作業者の理解が深まります。
インプット(材料・ツール)
作業に必要な材料・ツール。目玉焼きの例なら、卵、油、フライパン、等が相当します。
システム名、メニュー名、ファイル名、項目名等、作業に必要な情報を記載します。
手順・ポイント
手順を具体的に詳しく説明します。
目玉焼きの例なら「フライパンに油を大さじ1杯入れる」「フライパンを火にかける」等です。
システム画面や機械の操作を説明する場合は、説明と併せて画面例や図解を載せるとより分かりやすくなります。
ポイント=作業の品質を安定させるヒントがあれば補足します。
「強火で」「入力内容を保存すると次回以降の入力の手間を省けます」等がポイントに相当します。
判断基準
作業者が確実に作業ができたかどうか判断できる基準を明示します。
△判断基準が示されていない例
「ケーブルを差し込む」
○判断基準が示されている例
「ケーブルをカチッと音がするまで差し込む」
作業の所要時間、チェックシート等も判断基準に当てはまります。
料理の例で言えば、「白身が固まったら」「蓋をして2分」等が判断基準に相当します。
注意事項
手順やポイントとは別に、注意事項を書きます。
特に「絶対に守ること」や「よくある間違い」は、注意喚起のため色を変える、太字にする、枠で囲む等して、目立つように工夫します。
よい手順書を作る3つのコツ
よい手順書を作るためのコツはいくつかありますが、ここでは3つ挙げます。
- ユーザは誰か(ターゲットを絞り込む)
- 現在地はどこか(目次やフローを見せる)
- 一文は短く(簡潔に説明する)
ユーザは誰か(ターゲットを絞り込む)
同じ作業を実施するにも初心者とベテランでは必要とする情報が異なります。
手順書のユーザ(利用者)は誰かを明確にすることで、不要な情報をカットし、必要な情報を無駄なく盛り込むことができます。
また、ユーザに合わせて説明の仕方や文字の大きさ等を変えることで、より分かりやすい手順書にすることができます。
ユーザが初心者からベテランまで幅広い場合は、初心者に合わせて作りましょう。
現在地はどこか(目次やフローを見せる)
目次や業務の流れ(フロー)図があると、作業全体の流れはどうなっているのか、今どの作業をしているのか、あと何ステップで作業が終わるのか、中断した時はどこから再開すればよいのかが一目で分かります。手順書の1ページ目に手順名を順番に並べるだけでも、ユーザにとって役立つナビゲーションになります。
一文は短く(簡潔に説明する)
手順書最大のコツです。手順の説明は簡潔に、一文の長さは30〜50文字を目安にします。
文が長いと、途中で何を言っているのか分からなくなったり、ユーザが飛ばし読みしたりする可能性があります。
一文は短く、そして一文には一つのことだけ書くようにしましょう。
番号を付けたり、場合分けしたりすると、さらに分かりやすくなります。
△長い文の例
「まず、フライパンに油を入れて中火で熱し、熱くなったら、冷蔵庫から出して器に割っておいた卵を2コフライパンに入れ、弱火にして3〜5分焼き(蒸し焼きにする場合は蓋をする)、黄身が好みの固さになったら強火にし、白身が好みの焼き加減になったら皿に移します。」
○短い文の例
「①冷蔵庫から卵を2コ取り出し、器に割っておきます。
②フライパンに油を入れて中火で熱します。
③フライパンが熱くなったら、①の卵をフライパンにそっと入れます。
④片面焼きの場合は弱火にして3〜5分焼きます。蒸し焼きの場合は蓋をして2分焼きます。
⑤黄身が好みの固さになったら強火にします。
⑥白身が好みの焼き加減になったら皿に移してでき上がりです。」
手順書作成の5ステップ
手順書は以下の5ステップで作成すると、作業をスムーズに進めることができます。
STEP1. 作成対象と流れを決める
はじめに、何の手順書を作るのか作成対象を決めます。
次に、手順のスタートとゴールを決め、どのような作業があるのか、ざっくりでいいので書き出しておきます。
例えば、「Zoomで会議予約をする」手順書を作る場合、以下のようなことをここで決めておきます。
- Zoomアプリのインストール手順も必要なのか、Zoomの起動手順からでよいのか
- アカウントの作成手順も必要なのか
- 予約した会議をメンバーに周知する手順も必要なのか 等
STEP2. 素材を集める
実際の手順に沿って作業を実施してみて、手順書に載せる素材(写真や画像)を集めておきます。
手順を書きながら作業をすると、手順を誤った時にやり直しが発生するため効率が悪く、手順書作成に行き詰まる原因にもなりやすいので、このステップは重要です。
入力画面例や書類記入例を載せる場合は、誤って個人情報や秘密情報を公開しないよう、サンプル用のデータを使用するのがおすすめです。
作業途中に気づいた注意点があれば記録しておきます。
操作を誤った時に出るエラー画面等もあれば保存しておきます。
STEP3. 手順を書く
集めた素材を基に、順番に手順を書いていきます。
その際、書き方がバラバラにならないように、フォーマットを決めておくと便利です。
(例えば、番号は①、②、③を使う、画像は説明の下に貼り付ける、注意点は赤字にする、等々)
正常な手順とイレギュラーな手順(エラー、例外処理)は分けて書くと、流れが分かりやすくなります。
STEP4. テストする
実際に手順書に沿って作業ができるかテストしてみます。
作成者本人では手順の抜け漏れや間違いやすいポイントを見落とすことがあるので、手順書の作成者以外の人にテストしてもらうのがおすすめです。
テスト者に指摘されたところを修正し、手順書に沿って確実に作業ができることを再度確認したら、手順書の完成です。
STEP5. アップデートする
STEP4で手順書は完成です。
が、手順書は作ったらおしまいではありません。
ユーザから改善要望が出たり、業務ルール変更、システムのバージョンアップ、機器の交換等によって手順が変わったりする場合もあるため、手順書も定期的に見直して、常に最新の情報が盛り込まれているようにアップデートしていきます。
おすすめのテンプレート
手順書を一から作るのはちょっと…という場合は、テンプレートを使うのもおすすめです。
おすすめの手順書作成ツール
ツールを使ってオリジナルの手順書を作るには、こちらのツールがおすすめです。
- Teachme Biz
スマホやタブレットでも管理できるクラウド型マニュアル作成ツールです。画像・動画を使用した手順書を簡単に作成できます。 - NotePM
クラウド上で社内Wikiを作れる文書管理システムです。マニュアルや手順書、議事録などさまざまなドキュメントを共有できます。 - Dojo(ドージョー)
操作手順を説明したいアプリをいつも通り操作するだけで、マニュアルや手順書を自動作成できるマニュアル作成ソフトです。 - Dropbox Paper
Dropbox Paper(ドロップボックス ペーパー) は、オンラインストレージの「Dropbox」が提供しているクラウド型サービスです。
制作会社に外注する手も
ここまで、手順書を作成するコツやおすすめツールを紹介しました。ただ、実際に作るとなるとそれなりに大変です。
自分の仕事を抱えつつ手順書も作る余裕がない、手順書を作り始めてみたものの途中で行き詰まってしまった、せっかく作った手順書が活用されていない、…そのような場合は、専門のマニュアル制作会社に一度相談してみることをおすすめします。
マニュアル制作会社であれば、早く高品質な手順書を作ることができますし、作り方のアドバイスを頼むこともできます。
クレストコンサルティングでも、ゼロからすべてお任せで手順書を作ってほしい、自力で手順書を作りたいが社内のリソースやノウハウが足りない、途中で頓挫した手順書を完成させたい、古い手順書を新しくしたい、といったさまざまなリクエストに対応していますので、お気軽にご相談ください。
この記事が手順書作りのヒントになれば幸いです。
他にも手順書やマニュアル作成のコツを記事にしていますのでぜひ読んでみてください。