活用されるマニュアルのためのヒント~理由は相手の立場で考える~

活用されるマニュアルのためのヒント~理由は相手の立場で考える~

マニュアルが活用されない理由

せっかくマニュアルを作成しても「どうして社内で活用されないのか?利用してくれないのか?」と悩む会社もあるはず。
利活用されない理由はなんだろうか。これまでにお客さまから相談を受け、伺った理由はさまざまだった。「マニュアルが格納されている場所を見ても分類がされずに掲載順に並んでいるので探すのに時間がかかる、探すのが面倒」「いつもやっている業務だから読まなくてもできる」「必要なことは個人個人でメモに書いているからマニュアルを見なくても大丈夫」「更新されていないから見ても役に立たない」などなど。人はやる理由を探すより、やらない理由を見つけるほうが得意なのかもしれない。
マニュアルの置き場所や分類などはすぐに策をとろうと思えばとれるが、「読まなくても大丈夫」だったり、「更新されないから見ない」という考えには単なる物理的な改変だけではなく、意識改革が必要な大仕事だ。

相手の立場に立って考える

10年以上前に雑誌で読んだ芦屋広太氏の「理由は相手の立場で考える」という趣旨のエッセーを思い出す。
システム開発で顧客から機能追加要求を受けた時の遅延の理由について「この時期の機能追加はリスクがあるからやめたほうがいい」と伝えるよりも「同じような他社事例があったが結局品質が悪化し顧客側担当者や責任者は大変な目にあった」と言うと顧客側の担当者は自身に災いが降りかかるイメージが湧き、デメリットを意識できるという内容であった。もちろん工数増によるスケジュール遅延や品質リスク悪化の具体的内容を示すことも当然ではあるが、それよりも「自分自身」(ここでは顧客担当者)に起こることが具体的にイメージできるとより説得力が増すという話に、人間のサガが見える気がした。

マニュアルを作成したその先

これをマニュアル作成と活用の問題に置き換えたらどうなるか。
マニュアルを作成した担当者や部署は業務を可視化できた、大仕事をやり終えたと満足しているかもしれない。しかし、マニュアルは作成しただけ、作成して公開しただけでは結局、使われず、陳腐化して忘れられてしまう。マニュアルを作ったのは無駄だったと言われてしまう。
「理由は相手の立場で考える」としたら、どうだろう。マニュアルを活用していない理由を転換して「相手が自分のメリットとして捉えられる」ようにするには、どう考えればいいか。
いちばん重要なのはマニュアルを利用する立場の社員の意識改革だと思う。
探しやすく読みやすいマニュアルが社内にあり、マニュアルを読むと自分の利となるということを社員にわかってもらうことではないだろうか。
その手立ては色々考えられるが、マニュアルを作成する前に、作成のことだけではなくその先の公開方法や運用を検討し、あらかじめ決めておくことがカギとなる。

利用者の利益になるマニュアルを

公開方法や運用方法の一例をあげてみる。

探しやすく読みやすいマニュアルが社内にあるという認識向上のために

  • マニュアルは利用者が見ようと思ったときにすぐに見られるような場所で公開する(電子でも紙でも)→ただしセキュリティにも一定のルールを設けておくことが必要。
  • マニュアルは、作成者側に便利な分類ではなく、利用者がわかりやすいように分類して公開する。
  • 公開時にタイミングを合わせてマニュアル説明会や読み合わせ会を実施する。

マニュアルを読むと自分の利となるという意識変革のために

  • 業務遂行の王道パターン(効率よく進められ、効果を得られる属人化していないやり方)がマニュアルに掲載されていることを周知する。
  • いつ見ても最新の情報が掲載されていることを常識化する。→このためにはマニュアルを管理・更新する組織やグループを設けるなどの管理対策が必要。
  • 何のために業務を行うのかという目的をマニュアルに明確に示す。
  • マニュアル内に修正が必要な個所などを見つけて報告すると評価される仕組みを作る。
  • マニュアルをもとにした新人教育を特定の担当者だけに任せず、交代制で行い、評価の対象とする。

マニュアルサイクルを回し続ける

要は使いやすく、読みやすく、わかりやすいマニュアル(=利用者が得をするマニュアル)を作り、そしてそれを維持することがいちばん大切なのだと思う。
「使いやすく、読みやすく、わかりやすいから利用する→業務の変化に合わせて更新し続ける」
このサイクルに乗ってしまえば、社内でマニュアルは時代遅れで役立たずと邪魔者扱いされずに、更新されていて使われている愛される存在となる。
お客さまにそんなマニュアルを作って育てて欲しいと願ってこの仕事をしている。

資料:芦屋広太氏「理由は相手の立場で考える」(2015/9/24)

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