「マニュアル改訂」と「マニュアル改定」はどちらが正しい日本語?

「マニュアル改訂」と「マニュアル改定」はどちらが正しい日本語?

既に作成してあるマニュアルを見直し、必要に応じて手直しして再度リリースした場合、「マニュアル改訂」と「マニュアル改定」では、どちらが正しいのでしょうか。
今回は、「改訂」と「改定」という、よく似た日本語の意味と使い方について解説していきます。

「改訂」は「改めて訂正する事」を意味し、言い回しや内容、語句などを直し改める事

まず、「改訂」の意味ですが、これは「改めて訂正する事」です。
マニュアルや教科書、書籍などを見直して、言い回しや語句などについて、より相応しいものや時代に沿ったものに改めていく事や、内容についても、より分かりやすいものに改めていく事を指します。

例えばマニュアルにおいては、今まで使っていた機器の仕様が変わった事により、マニュアルもその機器の最新の仕様に合わせたものに変えなければならない、といった場合にはこの「改訂」が必要となります。
また、定期的にマニュアルをチェックして、語句の使い方や言い回しに分かりにくい表現があったり不適切な表現、あるいは語弊を生みやすい表現があったりした場合に、その言葉をより良いものに変えていく作業も「改訂」となります。

つまり、書籍の多くは「改訂版」といった具合で「改訂」が用いられます。
ただし、法令文に関しては「改定」が用いられます。その理由は下記にて解説いたします。

「改定」は「改めて定める事」を意味し、決まっていた事を定めなおす事

「改定」は「改訂」と同じ読み方ですし、漢字も一文字しか違いませんが、意味は大きく異なります。
「改定」は「改めて定める事」を意味し、それまでに既に決まっていた事を見直して再検討し、新しいものに変える事を指す言葉です。

よく目にするものとして代表的なものは「価格改定」です。
それまで決まっていた価格を見直して、新しい価格を定める事を指す言葉ですので「改訂」ではなく「改定」が用いられます。
これと同じように「社則改定」や「契約書改定」など、決まった事柄を新しく見直した場合には「改定」が用いられます。
契約書については、文言などの言葉のみを変更する場合は「改訂」を、内容の決まり事を改める場合は「改定」を用いますので、少々混乱しそうですが、何を改めたのかを考えれば、どちらの漢字が相応しいか分かってきます。

上述した「法令文を改めた際には『改訂』ではなく『改定』を用いる」というのは、まさにこのことで、法令は法の下で定められたルールそのものですから、例え誤字を改めるだけでも「改定」という言葉を使うのが正しいのです。

「改訂」や「改定」とよく似た言葉「改正」とは、誤りを正す事

「改訂」や「改定」とよく似た言葉に「改正」という言葉があります。
「改めて正す」という意味になりますが、読んで字のごとく「改正」は「誤りを改めて正しいものにする」という時に使われる言葉です。
より噛み砕くと、以前(あるいは現行)のものに不備や不適切な内容があったため、修正してより正しいものに変える、という意味になります。

「改定」とよく似ていますが、「改定」は「見直して新しくする」こと、「改正」は「修正して正しくする」こと、というニュアンスになります。

憲法改正や、校則改正などで使われる言葉です。

マニュアル改訂と、マニュアル改定で相応しい日本語は「マニュアル改訂」

さて、それでは本題の「マニュアル」に関してですが、「マニュアル改訂」が正しいのか「マニュアル改定」が正しいのか、という命題に関しては、答えは「多くの場合『マニュアル改訂』の方が相応しい」というものになるでしょう。

解説の通り、改訂は書籍などに多く使われる言葉であり、言い回しや内容などを見直して改める事を指しますので、マニュアルの手直しのほとんどがこれに当たります。
ただし、マニュアルがルールなどを定めたものであり、そのルールそのものを社内で検討して新しいものに改める場合などは「改定」という表現が正しくなります。

マニュアルの内容を新たに定めなおす場合は「改定」、マニュアルそのものの質向上のためにマニュアル自体をブラッシュアップする場合は「改訂」を使うのが良いでしょう。

こうして見てみると、ほとんどのケースで「マニュアル改訂」が相応しい表現となる事が分かります。

マニュアル改訂の重要性について

マニュアル改訂はとても大切な事です。
一度作ったマニュアルを何年も使い続けていくうちに、マニュアルは劣化します。
「劣化」などという表現は大げさかもしれませんが、時代の流れというものは我々が思っているよりもずっと早く、言い回しや語句、表現の方法などがどんどん古くなっていくのです。

また、人の手で作られたマニュアルには、どうしてもミスというものが生じる可能性があります。マニュアルが完成してしまった後に発覚した誤字や脱字、気になるミスなどは、最初こそさほど気にならなくても、長年使っているうちに発見されるミスが増えていき、チリも積もれば山となり、気付けば誤字や脱字、不適切な表現の温床になっているという事も考えられます。

それから、社内ルールの改定や、仕事の流れの変更、扱う道具や機器の変更などに伴い、マニュアルも変えていかなければならないという事もあるでしょう。

このような事態に対応していくためにも、マニュアル改訂はとても大切なのです。

マニュアル改訂のタイミングについては、下記の記事でまとめてありますので、チェックしてみてください。

▼マニュアルの改訂・見直しに最適なタイミングについてはコチラ
https://www.crest-con.co.jp/blog/1269/

マニュアル改訂をした時に忘れてはならない改訂履歴

マニュアル改訂は、少なくとも年に1回はおこなうのが理想ですが、場合によっては2年に1回、数年に1回でも良いでしょう。
大切なのは改訂履歴を残しておく事です。

いつ、どのような改訂がおこなわれたのかチェックできる事により、その後の改訂の参考にもなりますし、何か不備や不具合が発生した時に遡る事ができます。

改訂履歴には

    • 版数(「第○版」という書き方でOKです)
    • 発行年月日
    • 変更した点

の3点を古い順に記載します。
変更点が多くまとまらない場合には、マニュアルの改訂履歴のみをまとめた小冊子を作成し、記録として残しておくのも良い手段です。

いずれにせよ、いつどのような改訂がなされたのかという記録はきちんと残しておくよう心がけましょう。

まとめ

マニュアル改訂か、マニュアル改定か、正しい日本語はどちらかというテーマで、「改訂」と「改定」の違いや、マニュアル改訂のポイントについて解説しました。
「改訂」は「改めて訂正すること」で、言い回しや語句、内容などについて手直しすることを指します。
「改定」は「改めて定めること」で、既に決まっている事柄を見直して新しく定めることを指します。
この2つの言葉に良く似た「改正」という言葉は「改定」と混同しがちですが、前あったもの(あるいは現行のもの)の誤りを修正し正しく直すことを指します。
この3つの言葉を間違えないように気を付けましょう。

マニュアル改訂は定期的におこない、常にニーズに合った状態にしておく事が大切です。
また、改訂履歴もきちんと残しておく事で、過去の改訂の状況が掌握できます。
マニュアル改訂の時期やタイミングについては下記の記事にまとめてあります。

▼マニュアルの改訂・見直しに最適なタイミングについてはコチラ
https://www.crest-con.co.jp/blog/1269/

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