「自治体DX推進計画」をわかりやすく解説!意義・目的や取組内容など

「自治体DX推進計画」をわかりやすく解説!意義・目的や取組内容など

デジタルトランスフォーメーション(DX)という言葉が登場したのは、2000年代初頭、スウェーデンで2004年と言われています。それ以前にも、電算化やIT化といった言葉がありました。

  • 何冊もあったマニュアルをオンライン化した
  • 省庁で紙ベースでの申請を電子申請も受け付けるようにした。

そうしたニュースや取り組みを耳にするようになりました。こうした取り組みはIT化とも言われ、情報処理技術の発達により、今までの業務手続きを迅速かつ正確に処理するためにIT技術を取り入れたものです。
それらとDXとはどう違うのか?特に自治体で盛んに言われるDX推進とはどういったものなのか?分かりやすく説明します。

総務省による「自治体DX推進計画」とは?

2020年、総務省は「自治体DX推進計画」を発表しました。その当時の企業や自治体職員の反応には、「DXやデジタルトランスフォーメーションと言われても何のことなのか?デジタルで形が変わるのか」と困惑の声があったそうです。まだ、DXという言葉の意味が普及していなかった表れでしょう。しかし、「デジタルで形が変わる」という困惑の表現は一部ではDX化の本質を突いているとも言えます。
今後のDXは単にIT化を指すのではなく、ビジネス領域に限らずデジタル技術を社会に浸透させて人々の生活をより良いものへと変革することを指します。
つまり、制度や組織もデジタル化に対応して変革するということです。デジタルで制度、組織の形を変えることこそDX化の本質と言えます。

成功例

身近な例では、地域通貨のキャッシュレス化があります。埼玉県深谷市の地域通過「ネギー」はその成功例です。
DX以前の地域通貨と言えば、クーポン券などの紙ベース(アナログ媒体)でした。集計や管理に手間のかかるアナログ媒体の代わりにスマホなどのキャッシュレス決済を導入すれば、地域通貨の発行から売上管理までがDX化により一本化されます。これにより、自治体の管理コストが削減されます。また、売上データはクラウド上にビッグデータとして蓄積され、AI分析すれば付加価値の高い情報に生まれ変わります。
発行した深谷市では、マイナンバーカードに付随するマイナポントも地域通過「ネギー」で受け取れるようにしました。これにより、住民の利便性が大きく向上しマイナンバーカードの普及にも貢献したことになります。

深谷市の例に見るように、DX推進にはデジタル技術やAI等の活用により自治体の業務効率化を図り、人的資源を行政サービスの更なる向上に繋げていくことが求められています。

自治体DX推進計画の意義と目的

自治体DXの意義

総務省が2020年に示した「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」では、「デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会~誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」と提唱されています。
そのため、住民に身近な自治体からDX化を推進することを定めました。

計画策定の目的

総務省は「デジタル・ガバメント実行計画」において、各自治体の情報システムの標準化・共通化などデジタル社会構築に向けた各施策を効果的に実行していくために、国が主導的に役割を果たしながら、各自治体が足並みを揃えて取り組んでいく必要がある、としています。国が計画の大枠を決定し、各自治体が連携して計画を実行する。言わば、トップダウンとボトムアップの合わせ技でDXを推進しようとしています。
そのため総務省は、自治体が重点的に取り組むべき事項・内容を具体化して自治体にシェアしました。さらに総務省及び関係省庁による支援策等をとりまとめ、「自治体DX推進計画」として策定しました。デジタル社会の構築に向けた取組みを全自治体において着実に進めていく、という総務省の姿勢の表れです。

自治体DXに関する取組内容

推進体制の構築

組織体制の整備

自治体がDX化を推進するにあたり、限られた予算の中、組織の壁を越えて効果的な推進体制の構築が不可欠です。そのため、全体最適化の見地から、まず推進体制の構築が優先されます。

デジタル人材の確保・育成

デジタル人材の確保・育成はIT導入時代と変わらぬ課題です。慢性的に不足するICTの知見を持った人材をどう確保し、どう次世代へ育成していくかという課題も忘れてはいけません。

計画的な取組み

総務省はDX化に欠かせない情報システムの標準化・共通化についての目標時期を 2025 年度としています。このことから、自治体の現行のシステムの調査や、スケジュール策定などDX化に向けた計画的な検討を早期に行うことが求められています。
また、業務の簡素化、迅速化、行政の効率化等の成果をあげるためには、単なるシステム刷新にとどまらず、標準準拠システムを前提としたオンライン手続前提の業務プロセスの見直し、関連業務も含めたシステム最適化などに取り組むことが必要です。

都道府県による市区町村支援

DX推進のためには、都道府県が市区町村に対し、計画の具体的な内容を十分に伝えるだけでなく、必要な助言を行うことなどが求められています。
都道府県が市区町村の計画的な取組みを支援するといった一定の役割を果たすことが期待されているのです。

重点取組事項

総務省が推奨する「デジタル・ガバメント実行計画」の各施策等のうち、自治体が取り組むべき事項・内容については以下のものがあります。

  • 自治体の情報システムの標準化・共通化
  • マイナンバーカードの普及促進
  • 自治体の行政手続のオンライン化
  • 自治体のAI・RPA(※)の利用推進
  • テレワークの推進
  • セキュリティ対策の徹底

具体的内容、国から自治体への主な支援策等については、「デジタル・ガバメント実行計画」に詳しい解説があります。

※RPAとは

RPAとは、ロボティックプロセスオートメーション(Robotic Process Automation)の略称です。これまで人間のみが対応可能と想定されていた作業、もしくはより高度な作業を、AIなどが人間に代わって実施できる仕組みや機械学習等を含む認知技術を活用して代行・代替する取り組みです。

あわせて取り組むべき事項

自治体がDX推進に取り組む際には、システム更改、制度改革だけでは課題は解決しません。

  • 地域社会のデジタル化
  • デジタルデバイド対策

のような側面からもDX推進を行う必要があります。

地域社会のデジタル化

地域社会のデジタル化を推進するためには、5Gといった高速通信網の展開や、ローカル5Gの導入等、情報通信基盤の整備も欠かせません。
通信事業者と連携を図り、自治体の地域がデジタル化によるメリットを享受できる地域社会へ変革できるよう、デジタル化を集中的に推進することが大切です。
通信事業者など外部との連携が必要なことから、地域社会のデジタル化を進めるには自治体だけの能力をオーバーすることも考えられます。

デジタルデバイド対策

行政サービスのDX化では、利用者目線で、かつ、利用者に優しい行政サービスを実現することが重要です。
例えば、デジタル技術に疎い高齢者等が身近な場所で相談や学習を行えるようにする「デジタル活用支援員」の周知等の利用の促進、NPO や地域おこし協力隊等の地域の幅広い関係者と連携した枠組みも活用するなど、細かなデジタル活用支援が求められます。

デジタル活用支援員とは

高齢者のデジタルデバイド(情報格差)解消を目指し、地域の高齢者のデジタル機器操作をサポートする人のことです。

自治体DXを進める上でのポイント

ここまで、総務省が推奨する自治体DXについて、概要を説明しました。

では、自治体DXを進める上でのポイントはどこにあるのでしょうか?
それは、まず「IT化=DX化ではない」ということです。ITを導入すればDXは終わりではありません。ITを導入しDX化を推進することは手段でしかありません。
制度や組織も含めて改革し、住民一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会を目指す。誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化がDXの目的です。
そのために、DX化にはまず現行業務の「見える化」や問題点の「可視化」が必要となります。
今の業務内容や手順などを正しく把握し、マニュアル化することで見えなかった問題点をあぶり出し、業務改善・標準化につなげていきます。そのためには、今の業務担当者以外に外部からの知見も必要になるでしょう。
第三者による検証で問題点を可視化するのです。昔から言われる「岡目八目」の重要性が分かります。第三者の客観的な視点が必要です。
いわゆる第三者にもさまざまな立場の人たちがいます。
同じ自治体の他部署職員、同じ部署にいる業務遂行のベテラン、デジタルやITに特化した外部有識者。
それらさまざまな得意分野を持つ人たちをいかに確保するか。または次世代の人材を育成するにはどうしたら良いか。DX推進には人材の力は必須です。

なかでもITに特化した人材は、意外に自治体内部には少ないのが実態ではないでしょうか。
その点を考慮すると、日進月歩のIT分野において最新の知見を持った外部人材の活用も現実的な選択と言えます。

DX推進に失敗しないために

ここまで、自治体のDX推進について、総務省が提示した基本方針や計画について概要を説明しました。
DX推進には、計画の整備、体制の確立といった事前準備の他、既存業務の見える化、標準化、DX化するべき業務の選定など、多岐にわたる分析・調査が必要となります。
自治体として日々の業務を進めるほかに、DX推進を計画するのはかなり負担になるのではないでしょうか。しかし、国の指針では目標となるゴール時期が設定されています。言わば、納期ありきのDX推進なのです。DX推進を失敗するわけにはいきません。
DX推進に失敗しないために、外部のICTの知見を持った人材を登用するのは自治体DX推進の近道ではないでしょうか。
ICTの知識だけでなく、業務分析のスペシャリストや他自治体の成功例を知るコンサルティング会社の力を有効に利用すれば、短期に無駄のない計画でDX推進が図れるはずです。

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