自治体DXの先進事例まとめ!成功のポイントは…?

自治体DXの先進事例まとめ!成功のポイントは…?

今、地方自治体では、住民の利便性向上、職員の負担軽減、情報セキュリティ対策のため、DXが強く求められています。
総務省による「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」(2020年)では、自治体の業務システムを統一、標準化する目標時期が2025年度末に設定されました。
何も対策をせず、自治体DXを2025年度末に終えることは不可能です。2025年度になってからではなく、今から具体的な事例を知り、必要な対策をしていくことが重要です。
ここでは、国内で自治体DXを実現している成功例やその成功のポイントを紹介していきます。

あらためて「自治体DX」とは何か。
DXとは、デジタルトランスフォーメーションのこと。
デジタルがDになるのはわかりますが、トランスフォーメーションがXになるのはなぜか。
その由来は、英語のtransの持つ「変える」「超える」という意味がcrossとほぼ同じ意味であることから来ています。
crossには他に「交差する」という意味もあるため「X」と略されます。トランス→意味が同じクロス→ Xと変換されたわけです。
よって、【DX=デジタルトランスフォーメーション】になり、その直訳は「デジタルによる変革」です。もっと簡単に言えば「デジタル化」です。
自治体DXは、言い換えると「地方自治体が取り組むデジタル化事業」のことです。
例えば、これまで現金で支払うしかなかった住民税をPayPayなどの電子決済で支払えるようになることも、自治体DXの好例です。

自治体DXの先進事例

自治体に求められるDXは、他社との競争に勝ち抜き、利益を追求しなければならない企業のDXとは大きく異なります。自治体DXにおいて重要視されるのは、住民や職員にメリットをもたらすかどうかです。
デジタル技術で新たなサービスを提供することよりも、これまでと同じ手続や業務をオンラインで簡単に済むように改善していくことが求められているのです。
そのため、自治体DXが遅々として進まなくても、通常の業務には何ら差し支えがないのです。むしろ、DX推進のために通常の業務に支障が出たり、DXを試行してトラブルが起きたりすることの方が問題になります。
これらは、なかなか自治体DXが推進していかない理由の一つです。

デジタル技術を活用した業務改善の事例

役所といえば、住民から手続きが面倒というイメージを持たれやすいものですが、職員にとっても、旧態依然とした体制には首を傾げたくなるところがあるはずです。
業務連絡にチャットやメールではなく電話を使ったり、古い資料だけでなく新しい資料も紙ベースで作ったり、パソコンを使えない職員が多くいたり、民間では考えにくい仕事のやり方をしていることもあるようです。
そんな時代錯誤なお役所仕事を一気に革新するのが、自治体DXです。デジタル技術を駆使して、住民、職員の負担を軽減し、業務を改善した例を2つ紹介します。

【愛知県瀬戸市】電子決済が可能な管理システムの導入

愛知県瀬戸市では、2021年から電子決済機能付きの文書管理システムを一部で運用しています。採用された文書管理システムはNPO法人「行政文書管理改善機構」の「AKF」というファイリングシステムです。
ファイリングシステムを利用する大きなメリットは次の2点です。

  • 検索時間の短縮による事務の効率化
  • 一元的な情報管理による文書管理の強化

瀬戸市では、全庁でこの文書管理システムを本格運用し、完全にペーパーレスへと移行することを目指しています。また、電子管理により、保存文書は保存期間満了とともに適切に廃棄できるようになります。文書廃棄により、スペースを有効活用できるようになることもメリットの一つです。
文書管理システムには電子決済機能がついているため、住民にもメリットがあります。瀬戸市では、固定資産税・都市計画税、市県民税(普通徴収)、軽自動車税が電子決済で納付できるようになっています。利用可能なアプリはPayPay、LINE Pay、PayBです。広く普及している電子決済サービスが使えることが成功のポイントになっています。

【宮崎県都城市】デジタル面接の導入

コロナ禍の影響で、民間ではオンライン会議やリモートワークが当たり前になりました。その流れから、企業の採用面接ではデジタル面接がめずらしくなくなっています。
こうした民間の動きを受け、デジタル面接を取り入れた自治体があります。
宮崎県都城市では、2020年から職員の採用試験でデジタル面接が導入されています。都城市では、デジタル面接事業の目的として「受験者増に繋げ、 幅広い人材の確保」を挙げています。デジタル面接では、遠方からの受験も可能になります。そのため、受験者は時間や費用の節約ができ、働きながら受験することも可能になります。
都城市が採用したデジタル面接プラットフォームは、2004年にアメリカで開発されたHireVueです。受験者の9割近くがデジタル面接を「受けやすかった」と評価していて、市が採用したプラットフォームに不具合がなかったことを表しています。

行政手続オンライン化の事例

行政手続には“面倒なもの”というイメージがつきまとうのはなぜか。
それは、引越しに伴う住所変更手続き、マイナンバーカードの申請など、まだ多くの行政手続が昔と同じように役所の窓口で申請用紙に記入する方式で行われているためです。複数の手続をしたい場合、担当する課が異なれば何ヶ所も回らなければなりません。
そんな行政手続ですが、最近では自治体DXにより、オンライン手続が可能になったり、手続が1ヶ所で済むワンストップ方式が実現されるようになっています。成功事例を2つ紹介します。

【北海道北見市】書かない窓口・ワンストップ窓口の実現

北海道の北見市では窓口業務で「書かない」「ワンストップ」という2つのDXを実現させています。

1.書かない窓口

書かない窓口では、職員が来庁者に聞き取りを行いながら、各種の届出を作成します。来庁者はできあがった届出に間違いがないかを確認してサインをするだけです。この方法をとることで、記入漏れや記入ミスを防止し、手間を省くことができます。

2.ワンストップ窓口

ワンストップとは1ヶ所ですべての手続を終えられることです。例としては、住民異動届と同時に、子どもの転校手続きを済ませることなどが挙げられます。住民は必要な手続きを漏れなく済ませられ、該当する行政サービスも受けやすくなります。

北見市の窓口支援システムは、自治体DXとしてはめずらしく独自開発のシステムです。そのための取り組みは2012年からスタートしていて、2016年に独自システムが作られるまでには5年近くの歳月を要しています。
今から窓口支援システムを検討する自治体は、埼玉県深谷市のように、北見市のモデルを採用する方法(著作権料は北見市)や、民間のシステムを導入する方法が近道でしょう。

【東京都港区】ぴったりサービス・汎用的電子申請システムの活用

東京都港区では、マイナポータル利用による「ぴったりサービス(国)」と「東京電子自治体共同申請システム(東京都)」を使い、積極的に電子申請の範囲を広げています。2020年度には約100種類の手続で、オンライン申請が可能になっています。対象となる手続は、申請数が多い手続から順次拡充していて、児童手当、乳幼児医療費の助成、保育などに関して、すでにオンライン手続ができるようになっています。

DX推進人材確保の事例

地方自治体では、DXを推進するためのICT知識のある人材=デジタル人材が不足しているのが実情です。
地方自治体の職員は、公務員試験と面接を経て採用されますが、ICTスキルについて採用時に問われることはありません。そのため、職員の多くは専門的なICT知識を持ち合わせていないのです。
多くの地方自治体で、ICT技術は不足しています。しかし、自治体の職員が日々の業務に追われながら、新たに専門的なICTの知識を得ることは困難を極めます。
自治体DXを推し進めるには、デジタル人材を確保する新しい手段を考えていくことが重要です。

【大阪府】ICTコンサルティング企業に委託

大阪府は府内の市町村のDXを包括的にサポートしています。そのサポート業務は府の職員が行うのではなく、民間のICT系コンサルティング企業に委託されているのが大きな特徴です。
委託された民間企業は、アドバイザーとして、下記のような業務にかかわります。

  • DXへの取り組み状況を分析
  • DXを着実に進めるための支援
  • 新規情報システムの共同化を企画

大阪府がコンサルティング企業に委託した取り組みによって、デジタル人材確保が難しかった現状でもDX推進が可能になっています。
2021年度には、市町村からの希望が多かった「行政手続のオンライン化」と「コミュニケーションチャットツール」について共同調達が実現されました。

【宮城県・福島県・静岡県】ICTの専門家を市町村へ派遣

大阪府以外で市町村のDX化を積極的に支援しているのは、宮城県、福島県、静岡県です。この3県では、県が高度なICTスキルと豊富な経験を持つデジタル人材を確保して、市町村に派遣しています。
派遣されたデジタル人材が担当する業務には、研修・助言(宮城県)、解決策の提案(福島県)、ICT専門家としてのアドバイス(静岡県)などがあります。
3例とも、派遣費用は県が負担しているため、市町村は財政を圧迫することなく、DXを進めることができます。

自治体DX成功のポイント

自治体DXを成功させるには、高いICT技術が必要です。それには、豊富な経験を持ったデジタル人材を確保することが不可欠です。
自治体の職員は、どこをオンライン化するべきかはわかるかもしれません。
しかし、オンライン化を実現するための具体的な方策を立て、多くのデジタルシステムから導入システムを見極める知識やスキルは不足しています。
努力を重ね、独自の窓口支援システムを開発した北見市の例もありますが、自治体DX推進が急がれる今、これから独自システムを開発するのは、至難の技です。
ここで紹介した自治体DXの事例から分かることは、

  1. DXに適したデジタルシステムを導入すること
  2. DXを実現に導くデジタル人材を確保すること

が、成功の大きなポイントになっているということです。
では、導入するべきデジタルシステムに精通したデジタル人材を確保するためには何をすれば良いのか?大阪府の事例のように外部のコンサルティング企業を活用することは、一番有益な選択肢の一つです。

自治体DXの先進事例をチェック

総務省の公表している自治体DXの事例は約80例にものぼり、一見すると多くの自治体でDXが進んでいるようにも見えます。
しかし、全国の都道府県と市区町村を合わせるとその数は1788団体。約80の事例は全体の4%です。
自治体DXの成功率は明らかにされていませんが、経済産業省や他の媒体が出している民間企業のDXの成功率は、どのデータでも10%前後にとどまっています。
民間企業でも難しいDXを、自治体の内部の力だけで成功させることは、大きな課題でもあります。
成功事例のように、適切なデジタルシステムを採用したり、優れたデジタル人材を確保するためには、外部の力を取り入れることは最も現実的な選択肢の一つです。
自治体DX推進には民間のコンサルティング会社も注目しています。中でも、クレストコンサルティングは数多くの企業の業務コンサルティングを行ってきた実績から、自治体DXを支援する流れも熟知しています。
「どこから手をつけてよいかわからない」「スタートしたがうまくいかない」といったお悩みにも適切なアドバイスが可能です。

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