クラウドでマニュアルを作るメリットとデメリット
パソコン技術の発達、クラウドの浸透により、マニュアルの電子化、クラウド化を積極的に取り入れる企業が増えてきました。
昔ながらの紙マニュアルを使い続けている企業も多いですが、クラウドに移行しようという動きも少しずつ増加傾向にあります。
これから新しくマニュアルを作る際には紙で作るのか、それとも電子で作ってクラウドで管理するのか、どちらが良いのか考えるところから始めなければなりません。
今回は、クラウドでマニュアルを作ることについてのメリットやデメリット、紙マニュアルとの違いについて詳しく解説いたします。
クラウドでマニュアルを作るとは
「クラウド」という言葉は最近よく耳にするようになりましたが、インターネット上のサーバーを借りて、そこにデータを保存して管理する仕組みを指します。
クラウドでマニュアルを作るとは、このクラウド上でマニュアルを作成、管理することです。
現代において、手書きのマニュアルはほとんど存在せず、紙マニュアルであってもパソコンで作成されたものが一般的です。
パソコンで作成された紙マニュアルは、パワーポイント、エクセル、ワード、フォトショップ、イラストレーターなど、様々な編集ソフトを用いて作成され、これをプリントアウトして製本して作られます。
クラウド上で作成、管理をしないため、基本的には作成者のパソコン内でのみ作業が進められ、出力して初めてマニュアルとして完成します。
これに対し、クラウドでマニュアルを作る場合は、クラウドにアクセスすれば誰でも閲覧することができ、権限を持っていれば編集も可能です。
クラウドでマニュアルを作るメリット
クラウドで作成、管理、閲覧できるマニュアルには様々なメリットがあります。6つの具体的なメリットをご紹介いたします。
メリット1.インターネットが繋がればどこでも確認できる
クラウドマニュアルはインターネット上のサーバーに保管されるため、インターネットが繋がればどこでも確認できます。
外出先で確認したい時でも、アクセスすればいつでも確認できますし、他部署の社員に見てもらい時にもアクセス先を教えればすぐに確認してもらえます。
新入社員のためにわざわざ新しいマニュアルを増刷する必要もなく、クラウドURLを共有するだけでマニュアルを確認できるため手間もコストも削減できます。
メリット2.更新しやすく常に最新のものを確認できる
クラウドに保存したマニュアルはいつでも編集できるように設定しておけば更新や訂正が容易です。
また、旧版や誤りがある部分についてはクラウド上から削除することができるため、古いデータを間違って確認してしまうというリスクも回避できます。
紙マニュアルだと、更新したり改訂、訂正したりする際には新しく印刷製本し直す必要があるため、手間もコストもかかってしまいます。
古い情報や誤った情報が掲載されているマニュアルの破棄についても的確に指示しないと旧版と最新版が混在して混乱を招く恐れもあります。
クラウドマニュアルでは、こういった混乱や手間を大幅にカットできます。
メリット3.内容量が多くても管理に困らない
マニュアルの内容が多いと、紙マニュアルの場合はページ数が多くなり分厚く重く扱いづらい代物が出来上がってしまいます。
これに対し、クラウドマニュアルは内容量、情報量が多くてもパソコンひとつ、タブレットひとつ、あるいはスマートフォンひとつで確認ができるため管理がしやすいメリットがあります。
複数のマニュアルを作成する際にも、クラウド上で保管できるため、いくつものマニュアルがバラバラになることなくスマートに管理できます。
メリット4.コストを抑えて運用できる
紙マニュアルだと、どうしても印刷や製本のコストがかかってしまいますが、クラウドマニュアル(電子マニュアル)にはそのコストがかかりません。
サーバーレンタル料は発生しますが、データ量が多くなっても、閲覧者が多くなっても、それほど莫大な費用がかかることはないため、全体的なコストダウンを実現できます。
メリット5.検索機能で知りたい情報をすぐに見つけることができる
クラウドマニュアルはキーワード検索ができるため、知りたい情報をすぐに見つけることができます。
1冊のマニュアル本に全ての情報を集約する必要もなく、項目別にマニュアルを分けて保存することもできるため、情報をスッキリと整理して分かりやすく並べられる利点もあります。
メリット6.複数人でマニュアルを作りやすい
クラウドでマニュアルを作る場合、編集権限を複数の作成者が持てば、何人かで手分けしてマニュアル作成を進めることができます。
確認や手直しをする際にも、いちいちデータを送信する必要がなく、すぐにアクセスして確認できるため、無駄を減らしてチームとしてマニュアル作成に当たることができます。
逆に、複数人が編集できる状態になっていると、意図と反して編集されてしまったり、ミスで上書き保存されてしまったり…というトラブルリスクが生じるため、この点は注意が必要です。
クラウドでマニュアルを作るデメリット
クラウドでマニュアルを作るということは、インターネット上で全てのマニュアルを管理するということになります。
それゆえのデメリットやリスクもあることを忘れてはいけません。
クラウドでマニュアルを作るデメリットを5つにまとめました。
デメリット1.セキュリティが脆弱になるリスクがある
マニュアルの中には機密情報が盛り込まれているものもあります。
紙マニュアルとして作成部数を制限・管理し、しっかりと厳重管理していれば情報が漏れるリスクがほとんどありません。
しかし、クラウドマニュアルは、アクセス権限を持っていれば誰でも閲覧できるため紙マニュアルよりもセキュリティが弱くなります。
自社のみではなくレンタルサーバーで管理するため、意図せず情報が漏れてしまうリスクもあります。
デメリット2.インターネット環境が無いと閲覧できない
クラウドマニュアルは基本的にインターネット接続ができないと閲覧できません。
ダウンロードできるような設定で、自分のパソコンやタブレットにダウンロードできれば、インターネットに接続していなくても閲覧できますが、新規で確認するにはインターネットが必須です。
インターネットに不具合が生じてしまうとマニュアルが確認できずに作業が滞ってしまうことも考えられます。
デメリット3.パソコンやタブレットなどの媒体が無いと閲覧できない
当たり前ですが、クラウド上のマニュアルはパソコン、タブレット、スマートフォンなど、クラウドにアクセスできる媒体が無いと閲覧できません。
紙マニュアルであれば誰でも手にして閲覧することができますが、媒体が無い、もしくは媒体が故障してしまうとマニュアル閲覧ができなくなってしまうのもデメリットと言えます。
個々人にデバイスを支給するとなると、紙マニュアルよりもコストがかかることもあり、マニュアルを確認するためだけにデバイスを用意するのは考え物です。
デメリット4.操作に慣れていない人にとっては負担が大きい
パソコンやタブレットなどのデバイス操作に慣れていない人にとっては、マニュアル確認の負担が大きいです。
マニュアル確認のためのレクチャーが必要になると、余計な手間や人手が発生することも考えられますし、操作方法をいちいち質問されるような状況となると、作業が進まなくなることも考えられます。
慣れてしまえばクラウドの方が便利ですが、慣れるまでは大変だと社員が感じてしまうと、モチベーションが下がる原因にもなりかねません。
デメリット5.操作ミスなどによりデータを消失してしまうリスクがある
クラウドマニュアルには、権限を持っている人が複数で管理や編集ができるメリットがありますが、一方で操作ミスや管理ミスでデータを消失してしまうリスクもはらんでいます。
きちんとバックアップ取っておくこと、一部だけでも印刷して紙マニュアルとして保管しておくことなどによりリスクを回避することができます。
しかし、クラウドで管理していたマニュアルデータが消えてしまうと、復元や修復に大きな手間がかかります。
紙マニュアルとの比較
紙マニュアルとクラウドマニュアル(電子マニュアル)を比較して、その違いを見ていきましょう。
それぞれに特徴がありますので、これから作ろうとしているマニュアルがどちらに向いているか考えてみてください。
1.コスト
クラウドマニュアル:安い(ただし、デバイスの支給をすると高くつくことも)
紙マニュアル:高い(印刷コストがかかる)
クラウドマニュアルでも解説した通り、紙マニュアルは印刷代や製本代が必要部数かかるため、全体的にコストがかかります。
これに対しクラウドマニュアルはサーバーレンタル費用程度で、利用者(閲覧者)が増えても費用が追加とならない特徴があります。
ただし、マニュアルを確認するためのデバイスを支給するとなると莫大なコストがかかることもありますので注意が必要です。
2.セキュリティ
クラウドマニュアル:脆弱になりがちで対策が必要
紙マニュアル:管理を徹底すれば強固に守られる
セキュリティに関しては、クラウドマニュアルの方が紙マニュアルよりも脆弱になるリスクが高いため、扱いや権限付与には細心の注意が必要です。パスワードをかける、定期的にそのパスワードを変更する、閲覧履歴や編集履歴を定期的にチェックする、などの対策が重要です。
紙マニュアルは作成部数を限り、徹底した管理のもとで保管すればセキュリティを強固に保つことができます。
3.使いやすさ
クラウドマニュアル:慣れれば使いやすいが、使いづらさを感じる場面も
紙マニュアル:誰でも使えるが、持ち運びや検索が大変
使いやすさに関しては、マニュアルによってクラウドタイプが使いやすい場合と、紙の方が使いやすい場合と、二分します。
クラウドマニュアルは、マニュアルの情報量が多くてもデバイスひとつで全ての情報を確認できます。しかし、デバイス上でしか確認ができないので、複数のページを広げて見たい、書き込みながら使いたい、という場合には不便さを感じます。
紙マニュアルは、分量が多くなると分厚く重くなるため持ち運びが大変になります。しかし、誰でもすぐに閲覧することができますし、自分用のマニュアルが配布されれば書き込みも自由です。複数のページを開いて見比べることもできますし、活用の幅はかなり広いと言えます。
4.更新や改訂
クラウドマニュアル:非常に容易
紙マニュアル:手間がかかる
マニュアルの更新や改訂については、クラウドの方に軍配が上がります。
データを編集すればすぐに更新も改訂もできますし、常に最新のものだけを閲覧できるように整理整頓できます。
紙マニュアルは、更新や改訂となると新たに1から作り直さなければならず、一部改訂で薄い紙を追加する場合でも、古いマニュアルに手作業で追加していかなければなりません。
古いものを破棄するよう指示しても、どこかの棚に破棄し忘れたものが残っていると、うっかりそれを読んだ社員が古い内容のまま理解してしまうリスクもあります。
5.紛失のリスク
クラウドマニュアル:バックアップを取っておかないとデータが全て消えるリスクがある
紙マニュアル:火災や人的ミスが無い限りは紛失のリスクは無い
クラウドでマニュアルを作り管理する際には、データの紛失、消失に細心の注意が必要です。
複数の社員が閲覧や編集をするとなると、うっかりデータを削除してしまったり、変な内容を書き足して上書き保存してしまったり…というトラブルが起きかねません。
きちんとバックアップを取っておけば復元できますが、忘れていると全データが消え去ってしまいます。
この点、紙マニュアルは火災や人的ミス(勝手に持ち出して紛失など)が無い限りは紛失することはまずありません。
「もの」として存在しているため、その点は安心です。
クラウドのマニュアルも、一部だけは出力して紙のマニュアルとして保管しておくのもリスクヘッジと言えるでしょう。
クラウドマニュアル(電子マニュアル)と紙マニュアルならどちらが良いか
クラウドマニュアルと紙マニュアルの違いや、クラウドマニュアルのメリットとデメリットについて解説しましたが、結局どちらが良いのでしょうか。
答えは、「ものによる」です。
クラウドのマニュアルが適したものもあれば、紙のマニュアルが適したものもあります。
内容量が多く、閲覧者も多いものはクラウド向きですが、セキュリティや紛失リスクの対策をしっかりと取らなければなりません。
機密情報が盛り込まれているような外部流出は絶対に避けなければならないマニュアルは紙で作成して厳重な管理をする必要があります。
従業員が仕事でデバイスを使わない場合も、紙マニュアルの方が適しています。
誰が使うのか、何のために使うのか、どこで使うのか、どんな内容なのか、よく考えてクラウドか紙か検討してみてください。