マニュアル作成のメリット(効果)

chiebukuro2「マニュアル人間」という言葉があります。これは考えもせずにマニュアルどおりに仕事をする人、マニュアルに書かれていないことが発生すると適切に対処できない人を指す、マニュアルに否定的な言葉であるようです。
このイメージを受けておられるのか「だからうちにはマニュアルは必要ない」という方もいます。果たして本当にそうでしょうか。
本当にマニュアル作成にメリットはないのでしょうか。今回は、米国でマニュアルが発展した背景とマニュアルの必要性、マニュアルのメリット・デメリットという視点からマニュアルを考えてみたいと思います。

マニュアル作成はなぜ必要か

米国は、その成り立ちから現在まで常に移民が行き来している多民族国家であり、考え方や価値観、教育レベルもさまざまな状態です。
その価値観等の違いを補い、業務の一定の品質を保つために、米国ではほとんどの企業に「標準業務手順書」が備えられており、その指示通りに仕事を行うことが常識になっています。
マニュアルには、標準化された手順、処理量、品質、時間などが記述されています。役職ごとの権限も明示されていて権限を逸脱したことはできません。

また、米国は訴訟社会と言われており、想定外の訴訟が起きたとしても、標準化された手順に則り処理していること、PL法その他の法制度にも順守していることの証明・証拠が必要になります。その証明・証拠役をマニュアルが担っているのです。

これに比べるとわが国では、マニュアルはそれほど普及していません。「マニュアルなんかなくたって仕事できるよ!」という人もたくさんいます。

マニュアル人間と言われる人の無粋な対応も、実際はお客さまの要求を受け入れる権限が無く、責任者を呼べないという状況の中でマニュアル以外の対応をするべきではないという判断の結果なのかもしれません。
あるいは、そのマニュアルに権限範囲や権限外の事態が発生した時の対応方法の記載がないというマニュアル自体の不備からなのかもしれません。

マニュアルなんかに頼らずに臨機応変にやろうよという時代が来るとは思えません。
むしろ、グローバル化の進展(外国への事業展開、外国人労働者の受け入れ)、年収や教育レベルの格差増大など、これからのわが国は大きく変化していきます。業務品質の一定化・向上を目指すのであれば、マニュアルはますます必要になるのではないでしょうか。

メリット1:業務の明確化・標準化

業務は人によって遂行されるものです。人は十人十色、世界に一つだけの花です。ゴールは一つでもそこにたどり着くまでの道のりや手段はさまざまです。
より早く、より効率的に利益を上げることが命題の企業にとって、その人任せのやり方が良いとは言えません。それでなくても「業務が属人化して困る」と言った悩みを打ち明けてくださるお客さまもいます。
マニュアルを作ることになったら必然的に業務を見直すことになります。業務を見直し、明確にすれば、標準化の道筋が現れます。標準化とは単に平均化することではありません。

たとえ人が替わっても業務をより良く(早く、無駄なく、公正に)遂行できるようにすることです。これは、私たちの目指す「マニュアルを到達すべき最高レベルの業務を実行するための手順書にしたい」という思いの原点でもあります。

メリット2:要員の即戦力化

会社には常に人の流れがあります。新入社員や他部門からの異動者、契約社員等の受け入れ、退職など、担当者には本来業務を遂行する間にも受け入れた人を教育し、即戦力にすることが求められています。
マニュアル作成にあたって「ちゃんとした資料はない。業務の引継ぎはずっと個人の手書きメモをもとに口頭で伝えていたから」という言葉をお客さまから幾度も耳にしました。

その場で直面する業務を説明するには良いとしても、自分がこれから担当する業務について、事前に体系立てて俯瞰して習得できるマニュアルがあれば理解はなおさら早く進みます。
これとは反対に、細かい具体的な手順や操作方法も、すべて付きっきりで教える必要があるのでしょうか?要旨のみを説明し、後は「このマニュアルを見て進めてください。わからない点は聞いてください」と言えたら、新人を即戦力化でき、中断していた自分の仕事に取りかかれるはずです。

マニュアルとは担当者一人ひとりの仕事を助けるものなのです。

メリット3:システム操作の周知徹底

最近の業務システムは、ユーザーにとってより使いやすく作られるようになりました。必須入力項目には目立つ色や印が施され、どの項目がどんな理由で入力エラーであるかも一目瞭然です。
それでもシステム操作マニュアルの依頼は途絶えません。

業務とシステムの関係やシステム操作の目的・タイミング・具体的な入力事例など、人とシステムの接点を分かりやすく説明することが求められているのでは、と考えています。

人は意味や目的を持って(知って)行動する時に最大の能力を発揮できるものです。システム操作を教育し、周知するには、やはりマニュアルは欠かせません。

メリット4:コスト削減

業務を見直し、標準化したマニュアルがあれば、その標準化した業務の流れ・ルールで仕事を進めることになります。
業務担当者起因の「無理・無駄・ムラ」は減少するはずです。そうなれば必然的に「無理・無駄・ムラ」発生による管理コストの増大を抑えることができるでしょう。

また、マニュアルの形態を紙から電子に変更することもコスト削減・タイムロスの削減につながります。電子マニュアルは、新規作成時や改訂ごとに必要であった印刷・配送が必要ありません。
マニュアルを掲載した携帯端末を外回りの営業部員や店舗スタッフに配布している企業の多くは、ユーザーの利便性や活用推進に加え、改訂のタイムラグがないという理由で電子マニュアルを選択しています。

メリット5:リスクマネジメント

現場のことを良く考えた業務マニュアルには、標準化された業務処理に加え、予測されるイレギュラー対応についても掲載する場合があります。
業務の中でイレギュラーが起きたとしても、業務の標準形態を知り、事前にそれが起こる可能性があることを知り、イレギュラー対応方法についても知っていれば、これほどのリスクマネジメントはありません。
最短期間・最良な方法でイレギュラーに対応できるという自信と安心感を業務担当者は得ることができるのです。

マニュアル作成のデメリットとの比較

マニュアルは作成してしまえばメリットの方が多いかもしれないが作成には時間もコストもかかるではないかとのご指摘もあるでしょう。
確かに、これまでマニュアル無しで何とかなってきた業務だから、これからも大丈夫と思われるかもしれません。
そのように思いの方々には、ぜひとも再度マニュアル作成のメリットを検討してくださいと申し上げます。

熟練した担当者が業務を遂行しているからと言って、いつまでもその担当者が働けるとは限りません。企業の仕事と言うのは、必ず別の担当者に引き継がれるものです。ましてや、その熟練した担当者が本当に無駄のない効率的な仕事をしていると言えるでしょうか。

マニュアルにもとづく業務遂行によって高い水準の結果を得ることを目指さなければ、企業・組織の成長は望めないのではないでしょうか。

「マニュアルばかりに頼りたくない。社員にマニュアル人間になって欲しくない」と思われるならば、新しいマニュアル作りに挑戦して会社の歴史・風土を変えていくチャンスかもしれません。