これもマニュアル!~カップ麺の作り方

noodle

カップ麺を作ったことのない人は滅多にいないと思います。
そのカップ麺を作るとき、調理方法(作り方)の説明文を毎回読む人も滅多にいないのではないでしょうか?

カップ麺を作る手順はとても簡単ですから、一度読んで作ってしまえば、次からは読む必要もなくなりますよね。

実はこの「調理方法」説明文は、立派なマニュアルのひとつなのです。
マニュアル作成者から見れば、小さなスペースに書かれている「調理方法」はとても面白く、メーカーの思いや努力が詰まっていて素晴らしいと感じます。

まず目を引くのは、カップ麺のフタと本体側面に書かれている、驚くような情報量です。

フタ裏や本体の側面には、原材料、製造者や販売者の情報、栄養成分、注意事項などが、ところせましと書かれています。
当然、「調理方法」に配分されるスペースも小さなものになります。
しかし、その小さなスペースに、必要なことを漏れなく、分かりやすく、簡潔に作り方が説明されているのです。実にお見事!

メーカーが「調理方法」の記載にどのような工夫をしているのかを探ると面白くなりそうです。
この点については後述の見やすさと読みやすさで詳しく解説します。

さらに面白いのは、同じようなカップ麺でも、メーカーによって書き方が違うことです。
たとえば、日清食品「日清どん兵衛」と東洋水産「マルちゃん赤いきつね」を比べてみましょう。
どちらも「美味しいきつねうどん」です。
見た目も味も似ています。調理方法の基本も一緒です。
しかし、書き方が違うのです。

udon

日清どん兵衛 ※1

  1. フタを半分まではがし、彩り七味付き粉末スープの袋を取り出す。
  2. 粉末スープを先に入れ、熱湯をあげの上から内側の線までゆっくり注ぐ。
  3. フタをして5分後、かるくかき混ぜる。最後に彩り七味をかけて出来上がり。

 

マルちゃん赤いきつね

  1. フタを矢印まではがし、粉末スープを麺の上にあけ、熱湯を内側の線まで注ぐ。
  2. フタをして5分後、よくかきまぜる。七味唐辛子をおこのみでかけてお召しあがりください。

 

手順の数

どん兵衛は調理方法の手順が1~3まで、赤いきつねは1~2までで、どん兵衛の方が1手順多いです。

どん兵衛は、中に入っている粉末スープを取り出すことを1で説明しています。
赤いきつねは、「粉末スープを麺の上にあける」とすることで、すでに粉末スープを取り出していることを示唆しています。また、「フタを開ける」→「粉末スープを入れる」→「熱湯を注ぐ」の3つの作業を1で説明しています。

どん兵衛は、イラストを入れてまで粉末スープと七味を取り出すことを説明しています。
もしかしたら、これらを取り出さずに熱湯を入れてしまう人が多いのかもしれません。

七味の行方~その1

次の手順で、どん兵衛は「粉末スープを先に入れ」としています。「先に」と書くことで「七味は後で入れるのだ」ということが分かります。
赤いきつねは、粉末スープを入れるとだけ書いています。これでも「七味は後で入れるのかも」と推測することができます。

やけどに注意

そして、どん兵衛は「熱湯をゆっくり注ぐ」としています。これは、やけどを防止するためでしょうか。親切ですね。
赤いきつねは、調理方法の下にイラストと文字で「やけどに注意」と注意喚起しています。
どちらも、やけど防止はお客さまのためであり、PL法の観点からも最重要課題なのかもしれません。

七味の行方~その2

最後の七味の入れ方ですが、どん兵衛は「七味をかけて出来上がり」、赤いきつねは「お好みでかける」です。
もしこれが会社で使う業務マニュアルだったら、どん兵衛は七味をかけることが必須で、赤いきつねは任意となります。
まぁ、ここはカップ麺の作り方ですから、カップ麺を食べる人が好きに判断しても良いわけですね。

見やすさと読みやすさ

最後に、見やすさと読みやすさですが、どん兵衛は手順が横線で区切られていて見やすいです。
赤いきつねは、どん兵衛に比べると漢字が少なく、やさしい印象で読みやすいです。
どん兵衛の手順は、句読点を除く90文字で説明されています。その中で漢字は34文字使われています。全体の約38%が漢字です。
赤いきつねは、句読点を除く72文字で説明されています。その中で漢字は20文字使われています。全体の約28%が漢字で、どん兵衛より少ないことが分かります。

また、どん兵衛の文字と文字の間隔は、赤いきつねと比べると狭く、文字を詰めて書かれています。しかし、縦長の文字を使用していることで読みやすく、詰まっている感じがしません。
赤いきつねは、文字間隔を広くとっているので読みやすいです。
1cm2あたりの文字数を数えてみると、どん兵衛が約15文字、赤いきつねは約11文字でした。
どん兵衛は、狭いスペースに少しでも多くの情報量を記載できるよう、文字間隔を詰めて、それでいて読みやすい縦長文字を使っています。
赤いきつねは、漢字を減らし、文字間隔をとることで読みやすくしています。

  どん兵衛 赤いきつね
文字間隔  狭い  広い
文字種類  縦長の文字  ー
1cm2あたりの文字数  約15文字  約11文字
手順説明の総文字 *1  90字  72字
 手順説明内の漢字の割合 *1  38%  28%

*1:句読点は除く。

どうでしょう。どちらもわずか数行の説明ですが、工夫されていて面白いと思いませんか?
今後、カップ麺を作る機会がありましたら、ぜひ、「調理方法 ※2」を読んでみてくださいね。

※1:ここでご紹介した日清どん兵衛は、粉スープの商品です。「東日本」としている商品には液体スープの商品もあります。
※2:メーカーや商品によっては「作り方」「お召し上がり方」と表記されている場合があります。